導入事例:粉体のシミュレーションで BOXXのOCモデルが活躍


粉体のシミュレーションで BOXXのOCモデルが活躍



東京大学(東京都文京区ほか)はいわずと 知れた国内最高峰の大学だ。同大学大学院 の工学系研究科、レジリエンス工学研究セ ンターの酒井幹夫准教授は、粉体を中心に、 気体、液体の動きをシミュレーションする 研究を行っている。特に3種類が混合した 混相流が特殊な形状の容器に入った状態の 計算は、世界でも同研究室しかノウハウを 持っていないという。
「私はもともと原子力の分野を扱っていた のですが、原子力の燃料はウランなどの粉 をペレット状に固めたものです」(酒井准教 授)。それら専門的な用途以外にどういう分 野に活用されているのかイメージしにくいか もしれないが、酒井准教授は「応用範囲は とても広く、意外と身近なところにもある」 と語る。薬品や食品、プリンターのトナー といったものにも粉末が使われており、粉 体シミュレーションは利用されている。


気体や液体が混ざると 計算負荷が高まる


研究の上で課題となるのが、粉体だけ でなく、気体や液体と混ぜて使うことが 多い点だ。それぞれでもシミュレーショ ンの計算負荷は非常に高い。それらを混 ぜてお互いの動きに干渉するようになれ ば、さらにシミュレーションは複雑に、 時間がかかるようになる。
あるシミュレーションのモデルを作る 場合、 まず最適な数値を求めるために 何度も同様の計算を行う。 一連の計算 に時間がかかれば、それだけ最終的な結 果を得るまでに時間がかかってしまう。 そこで酒井准教授が選んだのはBOXXの ワークステーションだ。まず導入したのは「APEXX2 2401」。現行の「APEXX2 2402」の一つ前のモデルで、CPUを 4.4GHzに オーバークロックしていた。

     
サーバー室にはワークステーションがずらりと並ぶ。
各マシンはネットワーク経由で操作する。
BOXXの魅力を語る酒井准教授

コア数よりクロックが 速さに直結した

「それまでは Xeonなど、コアの数が多 いワークステーションを使っていました。 しかし、コア数の多いCPUは動作クロッ クは低い傾向があります。ある時期にいろ んなCPUを試したところ、実はコアが少 なくても動作クロックが高い方が速くなる ことが分かったのです。APEXX2 2401は、それまで購入していたXeonマシンの半額 以下でした。それでもAPEXX2 2401の方 が速かったことから、価格面でも魅力的 でした(」酒井准教授)。
これは酒井准教授の研究室が独自に作 成したプログラムコードを使用している のが要因の一つだ。プログラムの設計に よって、コア数とクロック数のどちらが より効果的か決まる。決して酒井研究室 のプログラムが多コアに弱いというわけ ではなく、コアが数十個あってもすべて 使い切るように設計されている。それで も検証した結果、コア数が少なくてもク ロック数が高い方が有利だったのだ。「ラ グランジュ的(個々の粒子の動きを追う方 式)な計算ではクロックの方が効くと考え ています」(酒井准教授)。
それからは、新しく導入するワークス テーションはほとんどが BOXX になった。 現在は 20台ほどのワークステーションを 使っており、そのうち4台がBOXX。既 に納品待ちのマシンもあり、これからさ らに増設する予定だ。
粒子の数を増やしたり、時間を伸ばし たりすると、より計算に時間がかかる。 逆の見方をすると、時間をかければより 複雑なシミュレーションができるというこ とだ。しかし酒井准教授の研究テーマは、 計算時間が1週間以下を目標に設定され ている。なぜなら酒井研究室では主とし て粉体が関わる新しい物理シミュレーショ ンモデルを開発しているため、大規模計 算よりも物理モデルの妥当性検証のための効率的な数値シミュレーションの実行を重 視するからだ。「例えば実時間が20秒な ら1週間で計算できる、それならば20秒 で妥当性を検証できる体系や条件を考え よう、ということです」。このように、あ る程度の規模の計算をより多く、速く終 わらせることを優先し、新しく開発した数 値解析モデルを世界に向けていち早く情報 発信することを考えているのである。


オーバークロックしても 長期間の連続動作が可能


酒井准教授の研究室では、基本的に ワークステーションをシャットダウンせ ず、24時間電源を入れた状態で運用して いる。またシミュレーションの計算を始 めれば、ほぼ 100% の負荷がかかった状 態で数日間動作し続ける。安定して動作 し続けることは重要な要素だ。BOXXの ワークステーションは、冷却を重視した 独自設計の筐体により安定して動作を続 けている。CPU をオーバークロックする と発熱も増えるが、それも考慮した設計 になっている。
CPU のオーバークロックをして、計算 結果に影響を与えないのだろうかと思う 人もいるだろう。酒井准教授はこの点も心配ないとした。APEXX2 2401で得ら れた計算結果を、解析解(シミュレーショ ンではなく、数学的な計算で得られる解) と照らし合わせてみた結果、得られた結 果はよく一致した。


小型モデルなら スペースを活用できる

酒井准教授が今とても気に入っている のが「APEXX 1」シリーズだ。これは「机 の上に置けるワークステーション」をコン セプトにしたモデルで、高さが 216mm、 奥行きが 229mmとタワー型の「APEXX 4」のそれぞれ半分以下。電源に AC アダ プターを採用し、外付けにしたことも小 型化に貢献している。小型化してもタワー 型の筐体と同じ CPU を採用している点も ポイントだ。
お気に入りの理由はこの省スペース性 だ。ほとんどのワークステーションは室 温 25℃に管理されたサーバー室で運用し ている。サーバー室で使えるスペースは 限られているため、台数を増やしたくて も限界がある。APEXX 1なら横に並べて もタワー型の筐体より多く置けることに 加え、高さを抑えられる分、棚の数を増 やせる。横倒しにすれば、縦に重ねる使い方もできる。
「 神は細部に宿る、 と言いますよね。 BOXX のワークステーションは、細かいと ころまでしっかりと作ってくれていると思 います。使っていて問題が起きたことが ないし、これまでのトーワ電機さんとの 実績から万一何か不具合が起こっても素 早く対応してくれると思っています。 安 心して使えるんです。周りの研究者にも 薦めているんですよ(」酒井准教授)

  
サーバー室で稼働していたAPEXX 1 1401。                    
計算中だったが、筐体はほとんど熱を持っていなかった。             


研究室のWebサイトにあるロゴ。風が砂を吹き飛ばす動画になっている。

シミュレーションの結果を3Dモデルで可視化したものだ

 

酒井研究室の使用モデル


 
 10コア/20スレッド対応のCore i75930Kを採用したハイパワーモデル。
動作クロックは3.5GHz。グラフィックスボードを最大4枚搭載できる.

   

CPUに4コア/ 8スレッドのCore i7-6700Kを採用。動作クロックを4.4GHzにオーバークロックしている。
内蔵グラフィックス機能もあるが、グラフィックスボードの増設も可能

  

119×216×229mmと小型ながら、ミドルスペックのAPEXX 2 2402と同じモデル、同じ動作クロックのCPUを搭載している。グラフィックボードはロープロファイルのみ利用可能